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第22回ふくしま住宅建築賞 最優秀賞

5つの光庭をもつ家

​竣工年月日

​所在地

規模構造

用途

延床面積

2009年9月

福島県いわき市

W造地上2階

併用住宅

277.60㎡

開く家、招く庭

築後10年を迎える自邸である。
2階を住居としこの地に住まう間、1階は様々な空間に変化し成長してきた。
そのプロセスを話したい。

私達は住宅用地を探していた。自邸を建築し、更にはリアルな暮らしの公開を考えたのだ。
夫婦共に人を招くことが好きで自らの生活を開放することに抵抗は無かったし、当時乳飲み子の娘と一緒に育つ家が欲しかった。

比較的交通量の多い道沿いにひっそりと敷地はあった。
間口狭く東西に細長い土地は永らく空き地で、公民館の近道や子供の遊び場であった。それらが建築によって分断滅失するのではなく「人々が集う記憶」として再現したいと考えた。

周辺環境へ配慮し建物ボリュームを削り出す。敷地中央に圧縮された箱型に光と風を招くため5つの光庭をくり抜く。
中庭を中心に回遊動線がめぐり暮らしに沿ったスペースと光庭が交互に現れる様は実に楽しい。
極端に低い建築は街に優しく、西日除けの格子網戸を開け放てば私達の暮らしを切り取る額縁となり、街との距離を近づける。

東西の抜け「通りみち」を再現した1階は人を招き迎え入れる開かれた空間だ。
当初は地元主婦の手芸品を扱い、料理教室なども開き賑わう場であった。震災後にオフィスへゆるやかに移行したが、度々イベントを開き、笑顔をつなぐ機会を試みている。
そうした時、中庭は外の部屋となる。上階の大きな床面積がたっぷりとした軒や半外空間を生み、屋内外を
自由に人々が行き交う。

東日本大震災と原発問題を経て激動する地に身を置き建築に向き合う事は、私達の設計主軸を
整理し再構築する機会となった。
特にコミュニティ形成への探求が尽きない。それは使命感も刹那的でもない。
この10年の間に次女が生まれ娘たちが成長し、家にも彼女たちが付けた愛おしい傷が増えた。
引越してきた当時は一人の知人もいない地で今、道すがら声かけし笑いあうご近所さんがいる。
新築時より愛される建築であることが何よりの喜びである。

​竣工年月日

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